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アオスジアゲハと近縁種(その2)~Common Bluebottle (Graphium sarpedon) and allies (Part 2) [世界の蝶 / Butterflies World]

アオスジアゲハと近縁種(その2)~Common Bluebottle (Graphium sarpedon) and allies (Part 2)


▲吸水するオナガタイマイ♂(インドネシア・スマトラ島にて)

 アオスジアゲハとその近縁種ということで、続編でまず動画を1本紹介しよう。同属のオナガタイマイ(Graphium antiphates)の吸水シーンである。ことし3月に当会の若者がインドネシアを訪れた際に撮影してきたものである。腹端から盛んに排出するポンピング行動がよく分かる。アオスジアゲハの属するGraphium属は♂の吸水性が高いことで有名である。ほとんどの種で発生当初は湿地に集まる♂の集団が観察される。一方で♀は吸水することは稀で、通常は樹上に活動域があるのか、なかなか姿を見ない。

G. meeki (Bougainevile, PNG).jpg
Graphium meeki (ブーゲンビル島、PNG産)

 一方で♂が長らく未知で、多くの愛好家・研究者の垂涎の的だったのが、ソロモン諸島とパプアニューギニアの島嶼部に分布するイサベルコモンタイマイ(Graphium meeki)である。本種については阪口浩平博士の不朽の名作『図説世界の昆虫1 東南アジア編Ⅰ』(1979、保育社)に詳細な紹介記事があるので、多くの日本人にとっても馴染みの深い珍種である。記載に使われた最初の採集者が、かの有名な世界最大のチョウ、アレキサンドラトリバネアゲハ(Ornithoptera alexandrae)の発見者として名高いミーク(A. S. Meek)であり、追加の個体を得たのが、ニューギニア周辺の蝶相解明に大きな貢献をしたストラートマン(Ramon Straatman)である。いずれも探検採集家としては世界屈指の実力者たちで、阪口浩平博士は紹介記事の末尾をこう結んでいる。

「ミークとストラートマン、この2人の卓越した採集家の腕をもってしても、なおきわめて少額の報酬しか与えなかったサンタ・イサベル島の自然! 未知の雄は果たしていつの日に、何人の手によって得られることだろうか」 (阪口浩平、1979)

 阪口博士は結局meekiの♂を見ることなく彼岸に旅立たれてしまった。未知の♂が得られたのは、阪口博士が紹介記事を書いてから10年を経た1990年代の初頭のことだった。
 現在ではタイプ名義亜種の産地、ソロモン諸島のサンタ・イサベル島のほか、パプアニューギニアのブーゲンビル島からも知られているが、まだまだ日本で本種を持っている人は多くないし、実際に本種の生きている姿を見た日本人は恐らく居ないと思われる。(もしおられたら、当会の会誌にぜひ記事を書いていただきたい
 ソロモン地区の深い深いジャングルに、人知れず舞うイサベルコモンタイマイ。多くの愛好者を魅了してやまない、アオスジアゲハ属屈指の名蝶である。

meeki description.jpg
Graphium meekiの原記載(1901, Novitates Zoologicae 8(4): 402)

(つづく)

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