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アオスジアゲハと近縁種(その1)~Common Bluebottle (Graphium sarpedon) and allies (Part 1) [世界の蝶 / Butterflies World]

アオスジアゲハと近縁種(その1)~Common Bluebottle (Graphium sarpedon) and allies (Part 1)

G. sarpedon.jpg
▲吸水するアオスジアゲハ♂(沖縄県にて)

  アオスジアゲハ(Graphium sarpedon)はここ数十年の間に東京、大阪、名古屋をはじめとする日本の都市部で最も勢力を伸ばしたチョウの1種ではないかと思うことがある。人と車に溢れ、天を衝くビルが林立する都会の中でも溌剌と飛んでいる姿を良く見かける。これは恐らく食樹のクスノキが大気汚染に強い樹種として街路樹で盛んに植えられたことに起因している。さらに都会化が進行すると、コンクリートジャングルでヒートアイランド化現象も起きるが、もともと熱帯ジャングルの出自を持つ本種にとっては、逆に棲みやすい環境になったのだろう。

  ブログ編集子が小学校に上がる前、本種はどうしても採集したい蝶のひとつだった。チャンスがあっても、子供の振るネットをやすやすと躱して、あっと言う間に遁走してしまう姿を見送り、何度地団太を踏んで悔しがったことだろう。ある時、駅前のクスノキの並木にいくつもの個体が飛んでいるのを見つけ、連日通ってついに採集した時の嬉しさは30年以上経った今でも鮮明に覚えている。
 さて、このアオスジアゲハ、これまでの理解ではインドからニューギニアまでに広く本種sarpedonが、スラウェシと周辺に近縁種milonが分布すると考えられてきたが、去年新たな研究成果が発表され(Page and Treadaway, 2013)、これまでのアオスジアゲハがじつに7種に分かれてしまった。不覚にもこの論文を入手したのが最近だったので、去年撮影し、ブログで「最美のアオスジアゲハ」として紹介しようと思っていたソロモン諸島の個体群isanderが、もはや独立種となってしまった。眠らせるのももったいないので、アオスジアゲハを含むGraphium属について、断続的に何度かに分けて紹介したいと思う。

G. isander (Malaita, Solomon).jpg
Graphium isander (マライタ島、ソロモン諸島産)

  まずは“最美のアオスジアゲハ”として紹介するはずだった、現在は独立種のGraphium isanderである。前翅の青色紋列が、通常は1列だが本種では鮮やかな2列となるのが特徴。ここが“最美”である所以。タイプ名義亜種の産地はパプアニューギニアのブーゲンビル島、ソロモン諸島の各島で、他にソロモン諸島のニュージョージア島ほか2島から亜種impar、インドネシアの西パプア州やパプアニューギニアのニューアイルランド島などから亜種imparilisが知られる。
 日本ではありふれた普通種だが、世界に目を転じるとアオスジアゲハも奥が深い。

(つづく)

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