【動画】吸い戻し行動とは / Movie File: On sipping behavior of Woodland Brown (Lopinga achine) [生態 / Biological note]
【動画】吸い戻し行動とは?
セセリチョウやタテハチョウの仲間で、乾いた鳥の糞や果実に止まり、腹端から水滴を出して湿らせて液体を吸う行動を野外で観察された方も多いと思う。これは「吸い戻し行動」と呼ばれ、液体でしか栄養摂取できない蝶では、有効な行動と思われる。
この吸い戻し行動で、腹端からではなく、口吻から液体を出して湿らせ、同じ口吻で吸汁するという興味深い行動が観察されている。20年ほど前に当会会誌Butterflies No.5に昆虫写真家の松香宏隆氏が鮮明な写真とともに報告している。実際にどのような行動なのかは、ご本人も「これがビデオなら一目瞭然なのにと思ったのだった」と書いておられるが、写真で説明するのはなかなか困難なようにも思える。
あれから20年。幸運なことに、先日山梨県でウラジャノメを撮影中にこの行動を記録することに成功したので、早速紹介したい。ウラジャノメの♂が乾いた砂利の上で吸水していたので、接近してみた。近くにいくらでも湿った場所があるのに、なぜこんな乾いた場所で吸水しようとしているのか訝しく思ったものだったが、撮影中に、口吻が触れた小石の表面が濡れてきているのに気付いて大変驚いた次第。この場所の近くに工事現場があったので、セメントか何かウラジャノメの好む化学物質が付着していたのだろうと推察した。
去年の傑作、アカシジミの産卵シーンを撮影した時にも痛感したが、このようなシーンを手軽な機材で鮮明に撮影できるような時代になったことはつくづくありがたいと思う。
(参考文献)松香宏隆. 1993. オニミスジの吸水、変わった吸い戻し行動. Butterflies 5: 1-2.
▲オニミスジ(Athyma larymna)の同様の吸い戻し行動(Butterflies No.5より)
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